インタビュー 事業創造イノベーションコース

日産テクノ 小林 猛志 氏インタビュー

JMIビジネス・イノベーションコースの卒業生である、日産テクノ株式会社 車両プロジェクト統括部 車両開発責任者(インタビュー当時の役職:NISSAN TECHNO VIETNAM CO.,LTD. CAD Data center (GG0) General Manager)小林猛志さんに、コースについて語っていただきました。
日本能率協会の鈴木雄馬がインタビューします。(以下敬称略)

人間力の重視とは何か?

鈴木
小林さんが受けられた2年前は、経営マーケティング戦略コースという名前でしたが、去年からビジネスイノベーションコースに名称が変わっています。

御社からは小林さんが一番初めに受講されてその後、継続してご参加いただいていますが、まずは受講されたきっかけについてお聞きします。

会社からはどういった期待があって、このコースに小林さん達が派遣されたのか、ご自身が理解されている範囲でいいのでお教えください。

小林
我々日産テクノは日産の子会社で派遣から始まって急激に拡大をしてきた会社です。
今では2000名近いエンジニアを抱える会社になっているのですが、残念ながら教育の仕組みがなかなか追いついていません。

2010年あたりから教育を体系化しようということで、かなり急速に拡充を図ってきました。
内容としては、主に技術やマネジメントに関するものが中心なのですが、もう一つ人間力というところを重視しています。

我々は自動車の開発をしているので、社内で仕事をすることが多く、もう少し外部の人達と異業種交流を図っていかないといけないというところから、今回の様な他企業の方と一緒にやる研修を取込んで、少し外から自分達を見る、或いは外の活動を知るという活動をさせるというのがきっかけだったと思っています。

異業種の交流でのメリットとは?

鈴木
その辺は、小林さんもご自身の課題として感じられていた部分なのでしょうか?

小林
やはり社外の方達とあまり付き合ったことが無いというのは事実です。
開発の関連部署の人達とはかなり付き合いはありますが、社外の人達との付き合いはかなり少ないと思います。
例えば、自分達が社外の同年代の方たちと比べて、どんなレベルにあるのか認識するとか、そういう部分はできていなかったように思います。

鈴木
実際参加されて色々な企業の方がいらっしゃったわけですが、やはり異業種のメンバーが集まってやる研修というのは、価値があると感じられましたか?

小林
そう思います。

鈴木
具体的に言うと、どのあたりが特にそう思われましたか?

小林
やはり自分達が普段している考え方や、プレゼン1つにしてもどういうレベルにあるかというのは、自分達で本当には分からない部分が多いのです。
それが外でどういった評価をされるのか知りたいということもありました。

特に自社標準に沿って仕事をしていることが多いので、社外の人達の様々な考えに触れることは、社内では得られない経験だと思います。

鈴木
当時のプログラムをお持ちしたのですが、一つ一つの具体的な細かい話というのは忘れておられるかもしれません。
しかし、プログラム全体として、すぐに使えるツールやフレームワークを学ぶというよりは、もう少し抽象度の高い内容のプログラムとして構成されていたかと思います。

すぐに使えるものというのは、すぐに陳腐化してしまうことも少なくないと思います。
一方、研修での学びを実践に展開するのが難しい部分もあろうかと思いますが、その辺の印象はいかがでしたか?

小林
確かにツールというよりは、やはり物事の考え方のところが、かなり勉強になったと思っています。

様々なゲスト講師の方達が、大企業での成功事例とかそういったことを話されていた内容がやはり印象に残っています。
特に経営者や社長の人達が多かったので、経営に対する志や信念というか、すごく強い想いということと、様々な覚悟が違うというのが、お話を聞いていくうえで感じられました。

特に我々は子会社で、親会社から守られているというのがあるので、一番違うのがそこかなと思いました。

それをただ聞いているだけでは目からウロコで終わってしまうのですが、自社に当てはめた時に納得できる部分、そうではない部分というのがもちろんありました。
自社でその考え方は、どのように生かされるのかという視点で研修を受けていたので、いろいろと考える機会になったと思います。

9ケ月の共同テーマ研究で得たものとは?

鈴木
通常のプログラムと並行して共同テーマ研究がありました。

異業種のメンバーで、9ヶ月間という非常に長い期間、1つのテーマについて議論していくプロセスの中で生まれる価値に重点をおいた演習なのですが、共同テーマ研究に関しての印象はいかがでしょうか?

小林
会社も自分も異業種の方たちとの交流を通して人間力を磨くというところがメインの参加目的でもあったので、そういう意味でこの共同テーマ研究で9ヶ月間という長い期間やったことは、同じ課題を一緒にやっていくという意味での価値と人間との付き合いのところから得られる価値は非常に大きかったと思います。

ただ、様々な企業のメンバーの持ち味の何を生かしてこのテーマに取組むかというところは、多少難しいところはあったと思います。

それぞれの持ち味を見極めながら、どう生かしてチームとして成果に持っていくかという意味では、かなりビジネスにも応用できる点が多かったと思っています。

ベトナムでの新しい取組みとは?

鈴木
いまベトナム、海外でお仕事されていて本当に多様性がある環境の中でお仕事されていると思うのですけれども、このコースでの学びが生かされている部分があるとすれば、どんなところですか?

小林
現在、部下300名を持つ組織のマネジメントをしているのですが、300名というのは、考えようによってはひとつの会社ぐらいの規模感だと思っています。

トップとして様々な物事の判断をしていかないといけないのですが、そこに対する考え方について今回の研修の成果を生かせているかなと思っています。

現状、日本でやってきたことを、とにかくベトナムでも同じ水準で出来るようにというのが、ベースとして我々がやっていることです。
ただ、ベトナムもこれから日本のやってきたことをただ出来るだけではなくて、自分達で価値を生み出していくような取組みをしなければいけない。
実はもう労務費や物価もどんどん上がってきているので、このまま行くとコスト競争力が無くなってしまう。
その中でベトナムの企業を維持発展させていくためには、ベトナムなりの何か新しいことをやらないといけないと思うのです。

新しい取組みを考えて一歩を踏み出すという意味では、経営者の方たちの志の強さと覚悟といったようなものが自分を後押ししてくれていて、新しい取組みにどんどん着手することが出来ているような気がしています。

社内を改革するうえでの葛藤とは?

鈴木
受講後に具体的に小林さんの「ここが変わった」という反応は社内であったのでしょうか?

小林
受講後にというか、受講中からやはり随時、考え方とか発言が変わってきたと思います。

自分は研修を受けながら成長していくので、それをどんどん職場に展開していくのですが、周りがなかなかついていけないというのがありました。
何をいっているのか分からないという意見と葛藤しながらやってきたのが多かったです。 

鈴木
このコースに込めた我々の想いとして、教育を通じて日本企業の成長を後押ししていきたいというのがあります。

昨今、イノベーションが日本企業から生まれにくい状況があるというのが、様々なところで言われているところですが、それを解決する1つの取組みが、イノベーティブなマインドを持ったリーダーがどんどん各企業で育っていくことだと考えているのです。

そういう意味では、御社は毎年複数名の方が参加されてきて、社内で少しずつ仲間が増えてきているという状況だと思います。
やはり、ご自身一人でやるというところでは難しいかもしれないですけれども、そういう方が何人か様々な部門に散らばっているというのは、これから先ひとつの資産というか御社にとってのアドバンテージになっていくのではないかと考えているのですが、その辺はいかがですか?

小林
もちろんその通りだと思います。
ただ、やはり会社の歴史はかなり長くて、徐々にそういうメンバーが増えてはきていますけれども、その人達が急激に会社としての変革を起こしている状態かというと、まだまだこれからだと思います。
まず一人一人が自分に与えられた範疇の中で、この研修をどうやって生かしていけるかだと思います。

そのアクションを、会社がいかに認めていけるかにかかっているのではないでしょうか。
過去のやり方から逸脱するのは会社としても勇気がいることなので、なかなか認められない環境が多くあるのは事実です。

少しずつ、そうした活動が増えていき、成果が認められることで会社が変わっていくのではないかと考えています。

ただ、自動車開発においてはある要件の中で期待されることを、しっかりこなしていくことが大前提になります。
それをしっかりやりながら、子会社として自分達の存在価値をどのように作り上げていけるかというのが、すごく大事だと思います。

ベトナムの子会社は、そうした取組みをするための非常に有効な場があるので、自身が赴任している間に、何か新しいものを生み出していければと思います。

グローバルの現地教育のポイントは?

鈴木
なるほど。
確かに大きく変わるのは非常に難しいと思いますし、会社として長い歴史もある中で、少しずつ変わっていくというのが現実的なのだと思います。

将来、小林さん達世代が役員になった時には、そうした考え方を理解した経営者になるというのが理想的なのかもしれません。
ポジションが上がっていっても、そうした気持を持ち続けていただきたいというのが我々の願いでもあります。

小林
なかなか難しいですね、子会社なので本社からマネジメントが次々やってくる現実があります。
そういう意味では、ベトナムはやりやすいです。

先ほどの新しい成果というお話につながりますが、エンジニアというのは、ベトナムにはほとんどいなくて、大半はワーカーです。
昔からベトナムで人材を採用する仕組みを、提携している学校とずっとやってきたのですがなかなか優秀な人を採用できないのが悩みでした。

そこで現地の優秀な大学と新たに長期連携の取組みを開発しました。
大学のカリキュラムに、我々が必要とする教育を組み込み、卒業した学生を採用する新たな仕組みを作ったのです。
こうした活動に取り組むきっかけとしては、正直、この研修を受けて「自身にも新しいことができるのだ」ということを体感し、マインドセットができたというのがあるのだと思います。

別件で、日系の大手人材派遣会社と協業して、新しい教育プログラムも作りました。
我々はCADや自動車に関する専門知識の教育コンテンツは持っていたのですが、日本語や日本流のビジネスのマナーというのは、なかなか上手く教育で身につけさせることができませんでした。
そこで後者の教育については、専門の会社に任せることにしたのです。

優秀なエンジニア人材が欲しいというニーズは、人材派遣会社側にもありましたので、お互いの持つコンテンツを持ち寄り、WIN WINになるような関係でプログラムを開発・導入して、そこから採用につなげるという仕組みを作りました。
今後、導入して広げていく活動をしています。

こうした活動ができたのは、研修に参加したことがきっかけだと思います。
社外の人達と何かをやるというのは、それまでは無かったですし、共同テーマ研究でコメンテータの方にも仰っていただいたように、研修で終わらせるのではなくて、実践にどうつなげるのかが重要だと思います。

この研修は受講料も結構高い研修なので、会社にちゃんと返せるかなという不安も持っていたんですが、それに値するようなことはできたと個人的には思っています。

エンジニアリング会社に今後求められることは?

鈴木
そういう具体的なご自身が感じられている成果があったというのは、大きいと思います。

このコースを受講される方は、様々な部門の方がいらっしゃるのですけども、小林さんからご覧になって、こういう方が受講されたらいいのではないかというのがあればお教えください。

小林
個人的には経営者自身が、もっと経営に関して学ぶべきだと思っています。
特に我々みたいな会社は、しっかり経営を学んだうえで経営者になってない例は少なくないのです。

やはりエンジニアリング会社でも一つ一つは経営なのです。

組織を束ねて運営をして維持存続をしていくためには、経営思想が非常に重要だということは、今回の研修でも学んだことなので、技術、マネジメントだけではなくて経営というのは組織の長に立つ人はしっかり学ぶべきなのではないかと思います。

それが組織の発展に繫がるわけで、組織が発展することが結果的には自分達がやっている事業の発展に繫がるわけなので、組織を束ねる立場の人達には非常に役に立つ研修だと思います。

自社の価値を見出すことの重要性とは?

鈴木
特にエンジニアの方がこのコースに研修にくるのは御社が初めてのケースなのです。
営業やマーケティング、経営企画などの部門の方が中心の受講層であるなかで、少し異色のケースといえるかもしれません。

エンジニアの方は、よりよいモノを作っていくことにかけての集中力や想いはとても強いと思います。
一方、それだけではお客様だとか世の中が求めているものと乖離してしまうだとか、そもそも世の中に受け入れられなければ技術自体を突き詰めていくことが難しいという状況があると思うので、そういった中で経営的視点を持つのは重要なのではないかと思います。

小林さんが仰った視点というのは、リーダーというのは自部門だけでなく全社的に見てどう最適を目指すのか、成長に繋げていくのかを考えて行動する立場なのだということだと思います。
そうした視点や考え方を身につけるうえでは、本コースのような外部研修をご活用いただくことも一つの方法かもしれません。

小林
どうしてもエンジニアは視点が狭くなってしまいます。
自分達が担当している領域で物事を見がちになるので、そういう意味でこの研修を通じてかなり高い視野で物事をみられる、自分の役割は役割として、その更に上から自分を俯瞰的に眺めることを気づかせてくれるような研修なので、そこは是非意識して受講されると良いと思います。

エンジニアリング会社は、商品力を期待されるよりも、高い開発品質や効率を期待されているので、そういうところで自分達の価値を見出していかないといけないと存続は難しくなってくると感じています。
そこに活かせる考え方というのを、研修を通して持ち帰ろうとしていました。

鈴木
最後の質問になりますが、来年以降、受講される方々に対してのメッセージがあれば、お願いします。

小林
最初に言った通り、これだけの人達の話を聞ける機会はそうそうないと思います。
ものすごく良いお話を聞かせてくださると思うのですが、それをただ聞くだけではなく、自分の中でどう解釈をして、取り入れるかが大切だと思います。
素晴らしい話だったなで終わってしまいがちなので、ぜひ自分と照らし合わせて何を活かせそうなのか、考えながら受けていただくと効果がとてもあると思います。

鈴木
ありがとうございました。

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