インタビュー 事業創造イノベーションコース

富士通 横川 博行 氏インタビュー

2014年度のJMIビジネス・イノベーションコースの卒業生である、富士通株式会社 統合商品戦略本部 戦略企画室 マネージャー 横川博行さんに、コースについて語っていただきました。
日本能率協会の鈴木雄馬がインタビューします。(以下敬称略 役職はインタビュー当時)

日本企業の閉塞感から感じる3つの課題とは?

(鈴木)
まずは受講のきっかけからお聞かせください。
会社は何を期待してこのコースに派遣されたのでしょうか?

(横川)
突然「これ、行ってください」と指名されました。
社内では幹部か、その手前ぐらいの職員を前から人選していたようなのですが、自分にとっては降って湧いたような話でした。 

(鈴木)
プログラムをご覧になって率直な印象はどうでしたか?

(横川)
いわゆるビジネススクールかなと思いました。
私は10年ほど前、会社の派遣でハワイにある弊社が運営するビジネススクールに行ったことがありますが、業務と切り離したうえで、きちんと勉強する場と捉えました。 

(鈴木)
実際に参加するにあたって何か期待することはありましたか?

(横川)
日常生活の中では、なかなか落ち着いて勉強するのが難しい状況でした。

自分で本を買って読んでも、それをどう吸収していくかについてのケーススタディも当然無いわけで、ただ読んで終わっていました。
ビジネス書は好きだったのですが、それを自分でどう解釈して答えを出すか、感じたことを書いていくとかは、よほどの人じゃないとやらないと思います。
そういうことをちゃんと腰を落ち着かせて勉強できるのはいいかなと思っていました。

派遣してくれた会社にも感謝しています。
上司は「このセミナーは結構、ボリュームがある」と言っていましたから、理解はものすごくあったので、課題図書をじっくり読むことができましたし、調べ物もできました。 

(鈴木)
実際に受講するときに横川さんが仕事の上で課題に感じていることは何かありましたか?

(横川)
うちの会社に関わらず、日本全体に閉塞感みたいなものが漂っているでしょう。
他社にどんな人がいて、ビジネスモデルとか技術革新とか将来のことをどう考えているのか、知りたかったのです。
個人的につながりがある他社の友人はもちろんいますが、大企業の人はあまりいませんから。

うちの会社で私の部署は全社を広く見渡せるところですが、他の部署の同僚を説得するのが難しくなっています。
ある商品を担当している人に「この商品ではダメだから、顧客を満足させられる商品を考えてほしい」とか「使う人の立場に立って技術革新してほしい」と言ってもなかなか通りません。
この点は多分、他の会社も同じだと思いますが…。

日本企業を変えるのに必要なことは?

(鈴木)
他の受講メンバーと議論したり、触れ合ったりする中で、何か気づいたことはありましたか?

(横川)
ありました。

私には関係ない、そう簡単に変われないという人がいる一方、逆にこれから何かやらなければいけないという人もたくさんいました。

今回研修で訪問したシンガポールのように、国を挙げて課題の解決に取り組んでいた例もありますが、こういう閉塞感の中で日本企業の人たちが、どうやって今の状況を立て直すのか、自分もそれを考えなければいけない一人であるとあらためて感じました。 

ソーシャル・イノベーションから学んだこととは?

(鈴木)
印象に残っている講師とか、役に立った講義などありましたか?

(横川)
まずエーザイの高山さんです。
すごく熱い方です。

私は商品を作る側だったので、ハードでいいものを作るとか、夏休みの自由研究の延長で何か新しいものができるとか思っていたのですが、ソーシャル・イノベーションの視点で考えると、そうではないことを教えてくれました。
ソーシャル・イノベーションを学ぶことで、自分の考えの枠が広がるとともに、このセミナーの枠も広がりました。

開講式で講演していただいた若者の文化やサブカルチャーを研究している博報堂の原田さんも印象に残りました。
50歳と自分よりずっと年上なのに、若者についてあれだけ堂々と自説を語れるのはすごいと思いました。

最後の日のメートルドテルの宮崎さんは真のプロフェッショナルだと感じました。
自分の分野に立った独自の視点から、きちんとした説明をしてくれました。自分と全く違う感覚で、とても楽しくお話を伺うことができました。

他にも皆さん本当に凄い方でした。
ビジネスモデルの講義をしてくださった早稲田大学大学院の山田さんも、デザイン思考のワークショップを担当された石黒さんも。

ワークショップについては、現在、社内でもデザイン志向でやっています。
この間も、海外のメンバーと実施したのですが、プロトタイプを出し、アイデアを提案して進めていたものですから、楽しく取り組むことができました。
それとワークショップは、スピード感を持って進めなければならないこともあらためて再確認しました。 

(鈴木)
あとはちょっと毛色の違う、苔を見たり、お茶を立ててみたりするなど、一瞬「えっ」と思うような内容がプログラムに入っていましたが、どう感じました?

(横川)
ビジネスマンや研究者の方のとても真面目な講演とは打って変わって、お茶とか苔の観察とか普段見なかったこと、気にしなかったことをするのは面白かったです。
大の大人が集まって苔の観察をする機会など、もう無いでしょうから、セミナーのバランスとして良かったのではないでしょうか。

バランスの良い充実した内容とは?

(鈴木)
経営的な視点への転換から最後に志を立てるというプログラム全体の流れは、納得しながら受講できましたか?

(横川)
全体の流れがうまくつながっていたと思います。

最初にまず経営が大切であることを確認したうえで、柔軟にイノベーションについて考えながらワークショップをしました。

最後に長崎へ行って坂本龍馬の足跡を辿ることによって、志の部分にまで入り込めたと思います。坂本龍馬ですから当然、グローバルな視点も視野に入ってきました。

セミナーのあとで受講仲間に会うと、一部の講師の方に対して批判的な声も聞こえてきますが、私はそれぞれの講師に良いところがあり、バランスという点で考えると、これ以外にどういうやり方があるのか思い当たりません。
全体のバランスや流れも考慮して講師を選んでいると感じました。

日本の大企業のマネージャークラスが感じていることは?

(鈴木)
職場に戻ってセミナーが役に立ったところはありますか?

(横川)
セミナーでメモはとっていたのですが、どちらかというと右脳と感性で話を聞いていました。
だから、習ったことをそのまま実践するのではなく、感じたことを生かしているというのは、部分的にたくさんあります。

まず、本をよく読むようになりました。
ビジネスに結びつけるとどうなのかなと考えながら読んでいます。

さっきの閉塞感ではないのですが、うちの会社もどこかくすぶっているような感じがあって、仕事を誰がやるかで譲り合いや押し付け合いがしばしばあります。
そんなとき、「私がやるよ」と前に出ることができるようになりました。
セミナーで学んだリーダーシップが影響したのかもしれません。

(鈴木)
意識レベルで何らかの影響が少しずつ出てきたということですか?

(横川)
当時の資料を読み返しても、プレゼンを思い起こしても、得るものは今でもあります。
セミナーで聞き、共感したことを自分の行動にどう活かすかが何より重要だと思います。
習ったツールを使ったら、それはプラスになるでしょうが、当たり前のことですから。

引き続き、講師の方と会っている受講仲間もいます。
個別に飲みに行くなどして今も刺激を受けているようです。

(鈴木)
受講仲間の話も出ましたが、異業種の同年代の方たちから受ける刺激は非常に大きいですか?

(横川)
大きいです。

私は海外との取引が多かったので、友人に外資系企業で働く人が多いのです。
外資系の人たちは英語力があり、勢いのある人がいます。

それは良いことだと思うのですが、私が日本企業にいるのは日本企業の中でもっとグローバルな仕事をしたい、日本の企業をもっと世界で活躍させたいという思いがあるからです。

受講仲間はおおむね日本の大企業で働くマネージャークラスでしたから、彼らがこの閉塞感の中でどう頑張っているのかが知りたかったし、それが分かって良かったという思いがあります。

日系企業が抱える閉塞感を打破する方法とは?

(鈴木)
閉塞感を打ち破るための方策は、おぼろげながらでも見えてきましたか?

(横川)
うちの会社も同じですが、どの会社も東京オリンピックまでは何とかなるという感じで騒いでいます。
あと5年しかないのに、それでいいのかとは思います。
日本人の良いところは定年まで頑張ろうという文化があることです。
でも、講師の方は終身雇用の世界を抜け出た人ばかり。
私たちがそのどちらを支持するのかがこれから問題になってくるかもしれません。

(鈴木)
受講者には人事担当者や工場で生産を担当する方もいましたが?

(横川)
最初は技術革新と人事にどんな関係があるのかと疑問に思っていました。
でも人事の担当者がこのセミナーに加わって、新しい日本の人事制度を考えることができたら面白いでしょう。
今までの大企業の人事は原石の人材を結構、潰してきたと思います。
何で原石の人材を活用できなかったのか、日本企業のどこに問題が潜んでいるのか、人事担当者の視点で見た方がよく分かることもあったと思います。
才能を秘めた人材のリクルート方法、人事システムとか考えられたかもしれません。
うちの会社の人事も参加すれば良かったですね。(笑)

受講仲間にマーケティングや経営戦略をやっている人はいましたし、セミナーで受講したようなことを常に考えている人も少なくないでしょう。

でも、面白かったのは生産現場や技術職場で働いている人がいたことです。
彼らが自分の仕事に関して何か感じ取れたのか、気になります。

(鈴木)
今後、このコースを受講するに当たってどんな方が受けたら良いと思いますか?

(横川)
年齢枠はもっと広げたら良いと思います。
今回は最年長から最年少まで10歳ぐらいでしたが、15歳ぐらいまで広げるのはどうでしょう。

私の年代では年下を軽視するつもりはありませんが、どうしても年上の方が上だと考えてしまいます。
最初から年齢で決めつけてしまい、年下の若い人もそれを意識していると思うのです。

だけど、若い人のアイデアや発想は私たちの世代にはないものだから、それをちゃんと受け入れられる許容性、寛容性が必要です。
だから、もっと多様な世代が一緒に受講し、考える方が良いと感じています。

多様性ということでは外国人とか女性も一緒に研修を受けられたら、発想が広がるのではないでしょうか。

たとえば中国人だと、日本の企業で働いてそれなりのリーダーシップを持っている人は、相当優秀だと思います。
母国語でもない日本語でディスカッションに加わり、海外に行ったら英語でバンバン議論するでしょう。
きっと私たちは太刀打ちできないでしょうが、それはそれで面白いと思いませんか。
こういう人がいると他の受講者ももっと刺激を受けることになります。

ただ、文化の違いがありますから、ぶつかることは多くなるかもしれません。
日本人だけでも訳が分からなくなることがあるのに、外国人が入るとなおさらです。
ただ、日本企業にいる外国人は日本人以上に日本人過ぎる方が多いのです。
中には見た目は外国人なのに英語ができない人もいますから。

五感で感じることの必要性とは?

(鈴木)
今後受講する後輩に向けて先輩からのメッセージをお願いします。

(横川)
これは私のやり方ですが、まずは感じることです。

苔の観察やお茶の話もそうですが、実際にモノを作って触ってみるなど五感で感じることにより、自分の中に経験として染みつき、仕事や生活の行動様式に現れてくることは実際にあります。

テキストにこだわり過ぎず、五感を働かせてほしいです。

私たちはできなかったのですが、講師の方がもっと困るような質問をしても良かったと思います。
すごい講師ばかりなので、難しいとは思うのですが。

最後に講師の方を感無量にさせて泣かせた人もいました。
難しい質問をした結果ではなく、講師の方が過去を思い出して目が潤んだ結果でしたが、それもある意味では受講者・講師の方々の本気の姿だと思いました。

あとチームの中ではみんな仲が良かったのですが、もっと議論し、合わないところは合わないで表に出るぐらいのところがあっても良かったのではないでしょうか。
ぶつかり合いや摩擦を恐れてはいけません。
自分の言いたいことをちゃんと言える環境ですから、遠慮せずにやっていただきたいと思います。

9ヶ月間は長いものですが、充実しているため短いです。
1単位1単位を噛みしめて臨んでください。

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